打鍼で息苦しさのとれた話

打鍼(だしん)とは・・・
小さな木槌で鍼を叩いて刺入するもので、江戸時代に御園意斎という人が広めたとされる。現代では刺入する事はなく、主に「刺さない響かせる鍼」として用いられている。

打鍼を初めて目にしたのは学生時代の実技の時間で、その時には「こんな鍼もある」という紹介と「こんなふうに叩く」という説明があったのみ。それ以来、打鍼と再び出会う事はなく、打鍼を臨床で用いる事もなく、自分には縁のないものだと思っていた。

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もう数年前のことになるけれど、ちょっと「こころがしんどい」時期があった。あれこれと思い悩む事が過ぎ、結果、自分自身の出した毒素にやられたような感じで、とても息苦しくなった。当時は自分治療もしていなかった頃で、こころもからだも野放しの状態だったのだ。

その日は鍼灸の講習会に参加していたのだが、講義を受けながらもやはり胸苦しい。。
そして実技の時間、患者役が回ってきた時に「凄くしんどくて息苦しくてモヤモヤします」と訴えてみた。

その時は鍼がない状況で、先生役だった人は「うーん。鍼以外で出来る事は・・・・」と考えた後、手で打鍼をして下さった。その講習会は流派を超えた自由な会だった為、普段は見ることもなかった打鍼と出会う事となったのだ。

肋骨の下端に先生の左手を置き、右手で左手を叩いていく。先生の左手は痛かったろうと思うけど、私の肋骨は痛くはなく、衣服の上からでも充分に心地よい振動が伝わってきた。

「あれ?何だか楽になってきました!」
うん。打鍼は効いた。やはりお腹と打鍼は相性がいいのだな。。身をもって体験した。貴重な経験。

今でも打鍼を使う事はないけれど、臨床の中では、接触鍼にて肋骨の下端に触れる事はある。安心、安寧の場所だな、と実感する。

ちなみに・・
木槌と鍼がなくとも、いつでも誰でも出来る「手で打鍼」は、私の中では「応急処置法」に分類し、引き出しにしまってあります。。
(つづく)