老いて香りし その2

老いたる木の香りというものについて書きましたが、ここからは記事にまつわる余談です。
お香の話ではなく、日本語の話です。

=====
当初記事のタイトルを「老香」とする予定でありましたが、「老香」という日本酒の専門用語があると知り、タイトルを変更することにしました。「老香」なんて日本酒用語があるとは知らなかった。紹興酒の名前みたいですね。

そこで「老いた香り、老いたる香り、老いて香る、老いて香りし」と、一通り並べて考えてみました。
いずれも「老・香」である事に違いはないのだけれど、言い回しひとつで随分と印象が変わります。
自分の中では「老いて香りし」がしっくりときたのですが、一体、なにがどうしっくりときたのか?

1)老いて香る・・・
老いてから香る、老いた後に香る、未来という時間を想定

2)老いた香り・・・
老いそのものの香り、香りそのものの老い、そのものの今を説明

3)老いて香りし・・・
老いという課程、その課程は過去・現在・未来までも含む、その中を香りが漂っていく

というように「老いて香りし」が最も時間と空間の拡がりがあり、お香の煙が遠くまで漂うように感じられ、言葉の余韻と香りの余韻とが、一番しっくり合っているように思えたのです。

1)と3)では「老いて」は同じなのですが、「香る」が続くと「老いて」も含めて断定となり、「香りし」が続くと「老いて」のほうにも広がりが生まれます。そういった事を、なんとなく無意識に感じて選択していたようです。

なんとなく無意識に感じている事を、意識的に分析してみるのもおもしろいですね。
日本語は奥深い。。余談でした。