五兪穴の楽屋裏

ひそかに思っていることがある。五兪穴の運用法は「鍼師が自らを治療する中」で磨き上げられていったものではなかろうか、ということである。

五兪穴は「井・滎・兪・経・合」の五穴。すべて肘より先、膝より先にある経穴で、臨床上とても重要な「ツボ」となる。流派や理論の違いはあってもこの五兪穴の役割は等しく大きい。

五兪穴、原穴、郄穴、絡穴、募穴、背部兪穴とある要穴の中でも、「五兪穴」にはひとつの家族のようなまとまりを感じる。「原穴、郄穴、絡穴」にはその親戚くらいの距離感を感じるし、「募穴、背部兪穴」などはまったく別の一族という感じがする。要穴とひとくくりには出来ないそれぞれの「生い立ち」がある。

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自己管理という面でも研究や研鑽という面でも、鍼師が自分自身に鍼をうつという行為は繰り返し行われてきたはず。その際どこに鍼をうつか?どこがうちやすいのか?という事を考えてみる。鍼師が最も自分の身体で鍼をうった「ツボ」ってどこだろう?

背中は無理。がんばっても脾兪から下くらい。お腹は可能だけれども仰臥位では少し不自然な体勢になるし、坐位だとお肉が邪魔するような・・・。では最も自分自身で鍼をうちやすい部位は?というと・・「肘より先、膝より先」となるのは自明の理。

ならば、鍼師が自分自身の身体に「ツボ」を求める時、最も多く触れてきたのは「五兪穴」なのではなかろうか?「ツボ」に触れる、鍼の「ひびき」を確かめる、治療効果を検証する・・いつも鍼師達の話し相手となってきたのは「肘より先、膝より先」にあるもの達ではなかったろうか?手の届く範囲だけでいかに最大限の効果をあげるか?

・・・そんな事を想像していると、五兪穴は鍼師達が自らに鍼をうつ中で研究が深まっていったのかもしれないなあ、と思えてきてならない。

130526

自分自身の治療ってどうしてますか?