倒れてから5日ほど祖母の身体は生きようとしていた。手足をさすっているとむくみもやわらぐ。口を洗浄する時はちょっと苦しいのか足を動かす。そんな反応も何だか嬉しかった。
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手を握りながら脈を診る。不規則な途切れながらの結代の脈。身体の中が調和していない。生きようと闘うところと、負けそうになっているところと、身体の中がばらばらになっている。
同じ家族でも受け継ぐ身体にはそれぞれ違いがある。私は中でも祖母から受け継いだものが多かった。小さなものが好きなのも祖母と同じだった。
温かい足に触れていると、これは祖母の足か、母の足か、私の足か分からなくなってくる。足も手も同じ。よくよく知っている形が重なっていく。
祖母と母が並んでいるとよく姉妹と間違われたそうだ。祖母はご機嫌、母はご機嫌斜め。その系譜は確実に私に受け継がれるだろう。
ちょうど春のはじまるその前の日に、祖母は旅立った。
頬に傷を残しての旅立ちはおそらくは不本意だったと思う。けれど、その不本意も含めたすべてが「縁」であったというしかない。
97年の人生とはいかばかりか。