脈のはなし

*整いました

「ととのいました!」という芸人さんがいましたね・・・
今回は、そっちの「ととのいました」ではなく・・
「脈がととのう」という、お話です。

鍼灸師は、はり治療に入る前に、様々なチェックをおこないます。
患者さんの身体の状態を、様々なサインから読み取ろうとします。

患者さんの、お腹や手足や背中にふれて、
温かさや冷たさ、固さや柔らかさ、痛さやくすぐったさ・・
そういった情報をキャッチします。
さっとなでたり、ポンポン叩いたり、時にはぐりっと押したりもします。

そうした情報収集のひとつに「脈診」というものがあります。
患者さんの手首に鍼灸師の指をあて、拍動を感じ取るものです。

*脈拍を確認するって何でしょう?

「ちゃんと脈を打って生きてるか、という確認?」
もちろんそれはそうですが、もっと細かい情報もみています。

「動脈硬化や、不整脈の発見?」
それも大切な情報です。でも、他にも情報をみているのです!

*伝統鍼灸における脈診では・・

脈が、速いか遅いか、浮いているか沈んでいるか、
押すとつぶれるかつぶれないか、滑らかかそうでないか・・
といったような情報をキャッチして、

身体の中が、冷えているのか熱があるのか、
血が足らないのか、気が足らないのか、はたまた余分に多いのか・・
といった、身体全体のバランスをみています。

*脈をみる意味とは?

脈診の意味は、治療方針をたてることにあります。

身体全体のアンバランスを見つけることで、治療ポイントが絞り込めます。
そして、そのアンバランスを正すべく、はりやお灸を行います。

もうひとつ重要な意味があります。
治療が正しく行われたことの確認です。

治療の後に、再び脈診を行い、傾いていた身体のバランスが、
正しく元に戻ろうとしている事がわかれば、治療は成功です。
(※例えば、身体のベクトルが左に行きすぎていたならば、
そのベクトルが右にむけばよいのです。あとは自然に元の位置に収まります。)

もちろん、脈を確認するだけではなく・・
痛かったり硬かったり冷たかった部分が、痛くなくなり柔らかくなり温かくなる、
といったことも確認していきますよ!

患者さんにいくら「脈がととのいました!」とお伝えしたところで、
「あ、そう」てな感じです。
患者さんは、目にみえて効果を実感したいと、そう思っていらっしゃるからです。

でも「脈がととのうことは、本当に大切」という思いは、日増しに強くなっております。

*脈はウソをつかない

食べたものを食べてないと言うことは出来ても、
食べたものを食べてないという脈にすることは出来ない。

別に、格言でも何でもないのですけども・・この通りです。

ドキドキ緊張して速まった脈など、自分ではコントロール出来ません。
いくら、平静をよそおっていても、です。

治療後に、あまりバランスの改善がみられない時は、
患者さんの身体は「心身ともに納得していない」ようです。
部分的な痛みはとれていても、です。

治療後に、実にバランスのとれた良い脈になった時は、
患者さんの身体は「心身ともに納得」されたようです。
具体的には「スカッと楽になった」などど言われる事が多いです。