食べることの切なさか

小学校の遠足の思い出で、妙に忘れられない場面があります。

遠足といっても、大型バスに揺られる小旅行もあれば、冬山登山や、歩く遠足など、様々なバリエーションがありましたが、それは、秋のみかん狩り遠足の思い出でした。

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そのみかん狩りは確か「30分食べ放題」とかいうイベントでした。先生の「ピー」のホイッスルで、子供達は解き放たれ、それぞれにとっておきの場所を見つけに散っていきます。私もお気に入りの(たくさん実る)みかんの木を探しに歩いていると、ふっと木の陰に先客を見つけました。

先客は、同じクラスではないけれどもよく顔を知っている子で、いわゆる「ジャイアン」みたいなガキ大将タイプの男の子。そのガキ大将が無心になってみかんを頬張っているところへ、丁度出くわしたのです。

ハムスターのように頬をみかんでいっぱいにして立つ彼のあまりに無防備な姿に、見てはいけないものを見てしまったような気がして何ともばつが悪く、「悪いことしたかな」と、何故かちくりと胸が痛んだのでした。

その場は見て見ぬ風をしながら別の木の方へ歩いていったと思うのですが、食べるという行為はなんと無防備なのだろう、と子供心に何故か悲しく、今でも印象に残っている場面です。

食べるという行為に漂う「もの悲しさ」のようなものを感じた、秋の思い出でした。