
鍼灸とは全身調整
身体自身が本来持つ「元気」を取り戻せるように、 身体全体を調整していく事が鍼灸のはたらきです。 身体全体を調整していくことは、遠いように見えて、実は一番の近道なのです。
「全身調整」といって思い浮かぶのは、まず「骨格調整」や「姿勢・バランスの調整」といった、形のはっきり見えるもの。
次に「自立神経調整」や「血のめぐりの調整」といった、直接は見えないけれども形のわかるもの。
では、鍼灸治療(経絡治療)でいうところの「全身調整」とは、一体どのようなものでしょうか?
鍼灸治療(経絡治療)が調整対象とするのは「経脈」というものです。「経脈」を調整する事で「五蔵」も調整していきます。
「経脈」も「五蔵」も伝統医学特有の言葉ですが、いずれも、人の身体全体を捉えたものです。
「経脈」とは、十四脈あり、全身をくまなく巡るもので、「五蔵」とは、「肝・心・脾・肺・腎」のことで、
生命活動の根幹に位置する大切なものです。
例えば、「筋」「血」「肌」「毛」「骨」などといった身体の部分も、いずれかの「五蔵」の配下にあります。
「経脈」と「五蔵」の調整とは、まさに「全身」の調整である、といえるでしょう。
鍼灸治療(経絡治療)における「全身調整」を考えるとき、
「調整役」という役割に例えてみると分かりやすいと思います。
まず、身体を一つの組織に見立て、仕事を調整したり、人を調整したりする、調整役の人を思い浮かべてみて下さい。
一つの部署を優遇すれば、必ず他の部署にしわ寄せが来る。そこをどのように調整するべきか…?
一方の要望を通せば、必ず他方で不満が噴出する。どこに落としどころを見つけるか…?
調整役の人は、細かく地道に少しづつ、時間をかけて説き伏せてまわります。
調整がうまくなされ、組織の全員がそれぞれ存分に力を発揮できた時、プロジェクトは大成功するでしょう!
そんな地味な縁の下の力持ちのような調整役の働きが、
鍼灸治療(経絡治療)でいうところの全身調整に、とても似ています。
身体全体をみて「あちらを盛り立てればこちらを抑え、足りていないところには気をくばり、一点だけを見るのではなく、
関わりのあるものすべてが上手くいくように…」といった働きかけを行うのが、全身調整なのです。
この鍼灸治療(経絡治療)の全身調整の事を、
本治法(ほんちほう)といいます。
部分だけではなく全体を調整していく事で、
時間が経つにつれ、その働きは大きな結果を生む事になるのです。