
日本生まれの経絡治療
現在日本で行われている鍼灸には、大きく分けて次のような種類があります。
(1)1930年~1940年代に形成された、近代日本の伝統的鍼灸。<経絡治療>
(2)1950年代以降に形成された、近代中国の伝統的鍼灸。<中医鍼灸>
(3)西洋医学の解剖理論に基づく、現代医学的鍼灸。
(4)口伝、秘伝などで伝えられてきたとされる、伝承鍼灸。
(5)オリジナルの理論や経験、(1)~(3)の折衷などの、自己流鍼灸。
ひとくちに「鍼灸」といっても、展開される内容は、それぞれまったく異なります。
道具としての鍼を用いても、その理論が異なれば、効果はまったく違います。
「鍼灸院ってたくさんあるけど、何か違いはあるの?」「鍼灸ってよく分からない」 といった皆様の素朴な疑問は、様々な手法が入り乱れてしまった、現在の鍼灸界のせいともいえます…。
伝統鍼灸について(鍼灸裏話)
ここからは、更にマニアックな話になってまいります。興味のある方のみお付き合い下さい。 (1)と(2)の伝統的鍼灸について、少し述べたいと思います。 (3)は現代医学ですので、ここでは触れません。(4)(5)は資料がなく、語る事が出来ません。
鍼灸の歴史は永いといっても、二千年以上も変わらずそのまま継続しているわけではありません。
大陸の歴史は複雑であり、民族・王朝の入れ替わりも激しく、
都度、文化(当然医学も)の洗い替え(破壊)のような事が起こっています。
そうした破壊の手を逃れることになったのが、日本に渡り、日本に残され守られてきた数多くの文献達でした。 そういったものを中国へ持ち帰り、新たに構築し直したものが現在の<中医鍼灸>です。 国策として、西洋医学との連携を目指している為、中西医合体の志向がみられます。
当院では、近代日本の伝統的鍼灸である<経絡治療>を行っております。
中国や日本の古典文献に基づきながら、日本の近代化と病態の変化に応じて、編み出されていった体系です。
鍼の形や、お灸のスタイルも、時代に合わせて変化しています。
様々な業界で「昭和の偉人」「昭和の名人」なる人達が活躍されましたが、
鍼灸界も同様に、昭和の初めには、偉大なる先輩方がおられました。
漢方を扱う事を取り上げられた日本の鍼灸師の現状を踏まえ、
「鍼灸にしかできない事」を、とことん追求して生まれたのが、<経絡治療>といってよいでしょう。
伝統とは、古いものをただ守るばかりではなく、時代に合わせて変化していく事も大切なのだと思います。